クラッチ交換(前輪駆動(FF)車のミッション脱着 概要)
前輪駆動車(FF車)のクラッチ板の交換をします。
自動車には
前輪駆動(FF)後輪駆動(FR)全輪駆動(4WD)となる駆動方式が存在し、ミッション車にあるクラッチ板の交換という分解作業において手順や方法の違いがあります。
ここでは前輪駆動車のミッション脱着とクラッチ交換を解説します。
対象は軽自動車です。昭和63年式三菱製ミニカ(H14V)です。
この作業における故障症状の概要は…
**ギヤチェンジの時にシフトが引っ掛かるような感じ。
**少々馬力がない。
…ですが、クラッチの滑りによる切羽詰った状態でなく、古いのでもうボチボチかなぁ…ということで交換します。
走行距離は約46,800kmで定期点検実践車です。

<< 尚、この作業は後輪駆動車の作業を類似しておりますので、当コンテンツ内にあるコチラも参考にしてください。 >>




@ ドライブシャフトを抜き取る

前輪駆動車(FF車)は左右2本のドライブシャフトで前輪駆動輪を回しています。後輪駆動の場合は1本のプロペラシャフトと呼ばれる駆動伝達部品とデファレンシャルギヤに介されたリヤシャフト(クラウンのような高級車やリヤエンジン式貨物車等の場合に通常のFF車のようなドライブシャフトが取り付けられている。)

まず、FF車の場合はドライブシャフトを抜き取ります。その前に
ミッションオイルを事前に排出しておきます。そうでないと、シャフトを抜き取った時にオイルが大量に流れ出します。ドライブシャフトはミッション側では単に挿入されているだけですが(スナップリングで内部のギヤとスコ〜ン!!と抜けない程度に入っている。)、駆動輪側(外側)はネジやピンでシッカリ固定されています。

さて、H14Vミニカの場合は、キャリパー(ブレーキ)&タイロットエンド(舵取りのロッド)&ナックル(車軸やブレーキローターを支持している部位)を外します。この時、どういう訳かドライブシャフトのアウター側(右側シャフト)が固くて抜けず、無理矢理抜き出したらホイールベアリングごとスッコ抜けてしまった…えっ?ナンデ( ̄Д ̄;) 多分まだ抜いていない片方(左側シャフト)も固いと思われたので、インナー側のみ抜き出した状態で済ませました。普通は写真のカローラのように綺麗に抜けます。インナー側を抜くと、オイルシールが見えます。油漏れや亀裂がある場合は序に交換する事を勧めます。

フロントアクスルの分解前の概観。
キャリパー、ローター、サスペンション等が見えます。
キャリパーを外す際は、ブレーキホースが作業中に干渉しないように
外して置きますが、キャリパーを完全に取り外す必要はありません
針金などでサスの傘部とかに吊るしておきましょう。
右側アクスルの様子。
ドライブシャフトを抜き取ろうとした所、非常に堅く力任せに抜いたら
ベアリングがスッコ抜けてしまいました。アララ…( ゜_゜;)
ベアリングは焼けてはいませんので再使用可能です。
キズや磨耗にようる破損が確認されたら交換した方が良いです。
確認方法は目視やタイヤを回した時の異音の有無で判断します。
ベアリングのシールやグリスの様子も確認しておきましょう。
【参考写真】(写真はトヨタ製カローラ)
ハブからドライブシャフトを抜くと、普通はこのようにチャント抜けます。
ハブのナットを外すだけで簡単に抜けてきます。
尚、シャフト両側先端部は絶対にキズを付けてはならないので、
取り外したらウエスなどで保護しておきましょう。
また折角取り外しているのですから、ドライブシャフトブーツの
様子も確認し、亀裂や破れがあれば交換しておいた方がいいです。
抜いた状態での交換は至極容易ですので、作業の効率化となります。
右側があのような調子なので、左側アクスルはインナー側のみを
抜き取りました。
不恰好にブラブラした状態ですが、ベアリングの破損を案じる
抜き取りは止めた方が良さそうです。
右側のアクスルのオイルシール穴
オイル漏れや破損をしていれば要交換ですが大丈夫でした。
左側アクスルのオイルシール穴
右に同じく大丈夫です。



A ミッションに付属する部品を外す

 
左右のドライブシャフトを抜き取った後は、その他の付属品を外し、エンジンとミッションをジョイントしているボルト類を抜きます。
大まかに言うとセルモーターやチェンジ機構、クラッチレリーズ関連、エンジン&ミッションマウント、電気配線、メーターケーブル等です。
ミッションを外す時点で邪魔にならないように外す時点を考慮して部品を撤去していきます。

分解前 分解途中
ミッションに関係した部品を取り外していきます。
脱着の作業の容易さも考慮して作業中に邪魔になりそうな部品も外します
ミッション部のチェンジロッド 運転席下チェンジ機構
H14Vミニカのチェンジ機構は1本のロッドの押し引きで行っています。
この機構は古いタイプです。ロッドを外す際には位置が元の場所に
再び付けれるように印を付けておきます。
最近の乗用車のチェンジは2本のワイヤーによる操作が多く、その場合はワイヤーの
頭を留めているピンやワイヤーを固定してるツメのような部品抜き、取り外します。
セルモーター全景 セルのピニオンギヤ
H14Vのセルモーターは軽自動車ながら小型自動車並に大きいです。
セルモーターを外す時はバッテリーのターミナル端子を外しておきます。
(−端子のみでもOK)セルにはバッテリーから延びる大きな電気を帯びた配線が結線されています。
セルモータ先端部にはフライホイールの外周のギヤを回すピニオンギヤがあります。
よく汚れているので綺麗に清掃しておきましょう。エアガンで掃除するくらいでよろしいです。
間違ってもクリーナーを吹き付けて清掃するのはよくありません。どうしてもしたい場合は、
ピニオンを下に逆さにして適度に吹きながらエアガンで汚れを飛ばしたりしましょう。根気よくする作業です。



B ミッションを下ろす

ミッションを下ろす場合に注意しなければならない事は、先に述べたように下ろす際に邪魔な付属品を取り外すことですが、
エンジンやミッションはボディーとマウントと呼ばれるもので車両本体と合体してる訳ですので、下ろした後にエンジンがズレたり
脱落したりする事のないようにしなければなりません。エンジンマウントはこのH14Vミニカの場合は3ヶ所あります。
(左右とエンジン後方)
マウントの数と位置は車両によって違いがあります。このH14Vミニカはミッションに2ヶ所、エンジンに1ヶ所ですので、
そのままエンジンを支える事無く下ろすと脱落してしまいます。よってミッションジャッキ等で支持しておきます。
下ろす作業では、エンジンの角度やバランス等を考慮して、再びミッションケースを組み付ける時にスムーズに作業が進むように計算しておきます。軽自動車の場合はミッションも軽いこともあり、多少バランスが悪くても再挿入できますが、小型車以上になるとなかなかそうはいきません。


ミッションケースを取り外した状況。
左に見えるのはクラッチカバーです。
今回はフライホイールやバックカバーも外しました。
全部外すとクランクオイルシールが見えます。
オイル漏れがある場合は交換した方がいいです。


<<< クラッチの磨耗の新旧比較 >>>

クラッチ板(旧) クラッチ板(新品)
クラッチカバーのプレッシャーディスク(旧) クラッチカバーのプレッシャーディスク(新品)



C 洗浄&新品部品の組み付け

ミッション側のクラッチ室内は、このように汚れで真っ黒になっています。
洗浄方法としてはスチーム洗車機で洗うのが業者の常(だろう)と思います。
洗剤を付けなくてもある程度は汚れは落ちます。洗浄機が無い場合は、
灯油を使ってブラシで擦り、水ホースで洗うとかという方法もあります。
スラストベアリングとメンドラ(メインドライブシャフト)の様子です。
ベアリングを外した後に洗浄します。メンドラのカラー、つまりスラストベアリングがスライドする
筒状のような箇所はよく磨耗していますが、亀裂や余程の磨耗が無い限り大丈夫です。
今まで見た最悪のケースは、このスラストカラーが割れてしまい、ミッションごとアウトになった
車輌がありますが、そのような故障は普通ではありません。この部分は非常によく油脂類を塗布すします。

新旧のクラッチ部品。元々装着していたのは純正品である。
新品はアイシン精機の外品を使用します。
若干クラッチカバーの形状が異なっていますが問題ありません。
これはクラッチのプレッシャースプリング押すスラストベアリング。
古いのは汚れが固着しています。新品もカバー同様に外品を使用します。
これも形状が異なってますが問題ありません。
スラストベアリングとクラッチレリーズフォークを連結する部品。
新品を購入しても付属していない場合があるります。今回は再使用します。
フライホイールです。大概14〜17mmのネジ数本で取り付けられていますので、
簡単に外せます。
フライホイールの中心部にはメンドラの先端がジョイントします。
小型車以上の車輌になると、ここにパイロットベアリングというメンドラを軸受けする
小さなベアリングが挿入されていますが、このミニカにはありません。
板の表面に亀裂がや磨耗ないか確認します。
フライホイールの外周にはリングギヤが焼き嵌めされています。
洗浄しヤスリで表面を荒く研いで再びエンジンに取り付けます。
締め付けトルクはそう大きくないので締め過ぎには注意しましょう。
クラッチを組み上げる前にクラッチ板のシャフト穴がメンドラと合うか確認しておきます。
これは必ずやっておくべき確認作業です。
組んだ後に入らないようでは困りますからね・・・。
スラストベアリングをミッションに組み付けます。
スラッチスプライングリスという油脂でスラストする表面と
メンドラ先端部をよく塗布しておきます。
取り付け後、ベアリングのピンがシッカリ入っているかや
スムーズにスラストしながら動くかをフォークを動かしながら確認します。
 フライホイールの中心穴にもクラッチスプライングリスを塗布します。
クラッチ板には前後があります。
反対に入れるとクラッチが切れなかったりという問題が起こります。
普通、少し出っ張った部分が前部となりますが、
古いクラッチを外す段階でどういった取り付けがなされていたかを確認し、
それに合った取り付けをするのが分解組立作業の基礎です。




新旧クラッチの取り付け状況の比較。クラッチカバーは数本のネジで固定されます。
このネジのトルクもそんなに大きくないのです。インパクトでガリガリ締め付けるようなネジではありません。
あと取り付け時に重要な作業であるメンドラ挿入の軸出しをします。クラッチ板とフライホイールの中心穴が真っ直ぐに揃うように合わせ、
クラッチカバーを締め付けを行います。中心がズレてしまうとミッションがエンジンにジョイントしません。
軽自動車クラスでは微妙にズレがあってもジョイントできる場合がありますが、それ以上のクラスの車両となると全く入りません。
中心軸を出す特殊工具もありますが、目視で出すことも経験豊富なら可能です。



D ミッションを組み付けて完成完成

ミッションを支えるマウント リア側マウント ネジを間違えずに・・・

クラッチ交換後はミッションケースをエンジンと合体させ、あとは外したのと逆の作業で組み上げていきます。
エンジンとミッションを合体させる作業は、このクラッチ交換の総作業において最大の山場です。一撃必殺で合体させたいものです。
特に注意すべき点はありませんが、強いて注意する場合の作業点は・・・

@ 合体させる時にハーネス等の部品を挟まないように注意する。
A ミッションケースを固定するネジの大きさ&長さはそれぞれ異なるので間違わないようにする。
B 外した部品が全て緩みがないかチェックする。(マウントネジを締め忘れた。後日談)
   …等です。


交換完了!(`・ω・´)ゞ


翌日は紀伊半島の山岳地帯で試験走行
お〜!お〜!よう走るぅ!よう走るぅ! ( ゜∀゜)



<<<<<  参 考 整 備 資 料  >>>>>

トヨタカローラのミッション
小型自動車のミッションケースは軽自動車のそれとは倍近くの大きさがあります。
オートマチィック車仕様が大多数を占めるカローラですが、珍しくミッション仕様の車です。
カローラのクラッチ交換作業は随分やり易い方ですが、人力で持ち上げてエンジンと合体させるには
困難なのでミッションジャッキを使って載せます。

日産パルサーのクラッチがぁ…(゚д゚lll)
走行困難な程に滑ってるクラッチを取り外してみると・・・よくこうなるまで走ってましたな〜。







症状 原因 対策
クラッチが滑る。クラッチの切れが悪い。 クラッチ板の減損 クラッチ(板&カバー)交換 X > <スラストベアリング X
その他 ミッションオイル交換 X 


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